Cuisine locale地産地消

AuBless 丹治奈緒子さん・夏黄金の名付け親 安部瑞雄さん

写真:麦畑の前のAuBless丹治奈緒子さんと、夏黄金の名付け親、安部瑞雄さん

涌谷町を車で走っていると、綺麗に色づいた一面の麦畑が目に入ってきました。これまで見た麦よりも濃い茶色をしたこの麦は「夏黄金」。実は、夏黄金を最初に試験栽培したのがここ涌谷町なのです。
当社では、小麦粉は夏黄金を使用しています。

涌谷町で、生産者と、食材を使う人とのあいだを取り持つ「仲人」として活躍しているAuBless(アウブレス)の代表・丹治奈緒子さんと、夏黄金の試験栽培を最初に手がけた農家・安部瑞雄さんのお二人に話を伺いました。



地域に眠る黄金を掘り起こす「地域商社」


写真:丹治奈緒子さん

ーー丹治さんは地域おこし協力隊から起業されたんですね

3年間、涌谷町での第1号の地域おこし協力隊を務め、任期満了後そのまま定住してここで起業しました。涌谷町民になって7年、起業して4年目になります。
AuBless(アウブレス)では地域の生産者さんや事業者さんをサポートしたり、商品開発・デザインやマーケティング、イベント企画、レシピ開発など、地域に眠っている黄金を掘り起こして広く皆さんに知ってもらったりと、地域商社のようなことを行っています。

生産者さんと、飲食店さん・販売店さん・ホテルさんなどのあいだをつなぎ、食材を使ってくれる人から評価を得られる関係性や、継続して使ってもらえるシステムを作る。あとは、涌谷町の特産品の取り扱いもしているので、自分ができることを何でもやる会社ですね(笑)



生産者に寄り添い「黄金食財」を仕掛ける

ーー涌谷町では「黄金食財」に取り組んでいるんですね

涌谷町は日本で初めて金が採れたところですので、涌谷で穫れる黄色い食材を「黄金食財」と名づけて普通の野菜よりも価値を高めて売りましょう、ということをやっています。あとは生産者の方に新しく黄色の野菜を作っていただくとか。金ニラや金のズッキーニ、あと涌谷園芸ファームさんの「黄金レモン」もその一つですね。
また、黄金食財を作る生産者の方たちを「ゴールドファーマー」と呼んでいるんです。

需要があり、黄金食財になれるものを、作ることができる農家さんにお願いする。無理のない数からスタートしないと続けてもらえませんので、そのあたりの見極めや、どのぐらいの量から始めてもらうのか、誰に頼むのか、販路や発注など、そういった仕組み作りがすごく大事です。
食の仲人みたいな感じですかね。マッチングと言うとかっこいいけれど、仲人には行く末まで見守ってお世話するイメージがあります。そんな感じですね。

涌谷では黄金食材を年間を通して穫れるようにしたいなと。自分としては、いつか黄金食財だけで作る、オール涌谷の「お膳」ができたらいいなと考えています。



地域の人の日常は、よそ者の非日常。そこに価値がある


写真:綺麗に色づいた一面の麦畑。濃い茶色をした麦「夏黄金」

ーー 一面の麦畑、本当に素敵ですよね

地元の人が、自分たちの町には価値があると思ってくれないといけなくて。それこそ夏黄金のあの風景は、私からすれば初めて見た感動的な風景で、こんな風景なかなか見られないよ! っていつも言っています。
涌谷町の協力隊にスカウトされたときに、これは何かの縁かもしれないなと。すごく「呼ばれた感」があったんですよね。そして移住して協力隊の活動をするために向き合っているうちに、この町本当に大好きだなって。

地域の人たちがあまりにも身近だからこそ気づいてない価値を、私たちのようなよそ者が再発見して、自分たちの町の魅力に気づくために背中を押してあげたいなと。
まだまだ掘り起こしたい魅力がたくさんあって、今でもワクワクしかないですね。



点と点がつながって線になり、やがて柱に

ーー以前から企画や人をつなぐ仕事をしようと思っていたのですか?

あまり意識をしたことはないんですけど、自分がいろんな人とつながりたいタイプなので、そうしているうちに情報と人が集まってきて、自然とつながっていくじゃないですか。それが楽しいなあと思っていて。「この人とこの人をつなげたら面白いことができそうだな」というワクワク感がたまらないですね。

メゾンカイザー仙台さんとつながりができたことは、私だけでなく生産者さんたちもモチベーションが上がったと思います。ありがたいご縁でしたし、継続して応えていきたいなとつくづく思いますね。

経験や出会いという点と点が線になり、それを円にして、これから柱にしていきたいなと思っています。



大好きな涌谷で描く将来の夢

自分の人生の最終的な目標はお店を持つことで、それは昔から変わりませんが、お店を持つのは今ではないなと。まだつなぎたい人がたくさんいるし、掘り起こしたいものもたくさんあるので。

今、もう自分たちの代で終わりだという農家さんがすごく多いんですよ。せっかくいろんなチャレンジをしてもらっているのに、その人たちで終わってしまうのはすごくもったいない。それを「涌谷ってすごいよね。金色の野菜、自分たちもやってみよう」という若い人たちが、この先つながってほしいんです。
自分がいなくても回るようにしないといけないなと思っているので、そこがなんとなく見えるまでは多分、この仕事をしているだろうなあという感じはしています。

やっぱり、豊かに暮らしたいんですよ、大好きな涌谷で。単純なことですよ本当に。自分の好きな町で楽しく暮らしたいなと思っているだけなので、そのために何か必要なこと、やれることを、全部やれるときにやっておきたい、そう考えています。



大切にしたい夏黄金のストーリー


5年前、麦の新種を試験栽培してほしいと頼まれ、宮城県でただ一人、栽培を手がけた安部瑞雄さん。2年間の試験栽培を経ていよいよ各県で本格的に栽培されることになったとき、なんとか涌谷で命名させてもらえないかと交渉。そうして「夏黄金」の名付け親に。
涌谷にちなんだ「黄金」の名が、この先いつまでも品種名として残ることになりました。


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