Cuisine locale地産地消

熊谷農園 熊谷貴幸さん・母 幸江さん

仙台市泉区・泉ヶ岳の麓で、木の栄養と綺麗な水に育まれた希少な原木椎茸と、減農薬・減肥料の環境保全米を栽培している熊谷農園さん。東日本震災時には放射性物質の影響で、ハウス内にあったわずかな原木を残してすべて廃棄という大変な苦労がありました。

それから12年。今年2023年には、干し椎茸の品評会で26年ぶりに農林水産大臣賞を受賞し、5度目の日本一に。「これで本当に復興だね」と、これまで関わってくれた皆さんが喜んでくれたそうです。

メゾンカイザー仙台では、熊谷農園さんから椎茸のほか、主に干し柿やカボチャをいただいています。
今回は、熊谷幸江さんと、農園の3代目となる三男の貴幸さんにお話を伺いました。



100袋が10分で完売。原木椎茸に長蛇の列

ーー根白石の「おもしろ市」で椎茸が大人気だと伺いました

熊谷幸江さん(以下、幸江)おかげさまで椎茸は人気があります。原木椎茸は作っている人がもうほとんどいませんので。干し椎茸も、作っているのは宮城県ではうちくらいではないでしょうか。干し椎茸もすごく人気があって、一度買ってくれた人は味がまるっきり違うと言ってくれます。

熊谷貴幸さん(以下、貴幸)6月はちょっと生産量が少なく100袋くらいしか持っていけなくて、10分くらいで売り切れてしまいました。



地元食材を生かす姿勢に共感




ーー熊谷農園さんとのご縁は15年くらいになるでしょうか


(幸江)宮城県の「食の伝道師」という料理人と生産者をつなぐイベントがあって、そこで出会ったのがきっかけですね。15〜6年前でしょうか。
いつも「地域に根ざし、地元の食材を使ったパンを作りたい」というお話を聞いていましたので、ある年にうちで作ったメルヘンというカボチャを持っていったんですね。それがとてもパンに合い、コクがあって美味しいということで、数年作りました。

最近では、干し柿も持っていきましたね。このあたりは柿の木がたくさんあるのに、高齢で柿の実を取れない人がほとんどで、もったいないなと思っていたんです。そこでご近所から柿をもらって椎茸の乾燥機で作ってみたところ、きれいに渋も抜けた美味しい干し柿ができて。それもすごくパンに合うということで、2〜3年使ってもらいました。
その後、私が体調を崩して数年途絶えてしまいましたが、また干し柿作りも再開したいなと思っているんですよ。




ーー今年はカボチャも復活しそうですか?

(幸江)ここ数年は田んぼの割り当てがうんと増えたので、カボチャは作れなかったんです。田んぼで忙しい時期とカボチャが重なってしまうんですよね。

(貴幸)来年は田んぼの面積が少ない予定なので、少しは余裕ができ、またカボチャが作れるかなと思っています。



原木椎茸で農林水産大臣賞を受賞


(幸江)全国の干し椎茸の品評会というのがあるのですが、今年、26年ぶりに「農林水産大臣賞」をいただき日本一になりました。
平成7年から11年まで4年連続で大臣賞をいただいていたのですが、それ以降は2位はあっても大臣賞は獲れず、今年ようやくです。
これまで関わってくれた県職員の方たちが「震災後に大臣賞を獲って、これで本当の復興だね」と喜んでくれたのが嬉しかったですね。
今はまだお父さんの名義で出品していますが、息子にも目指してほしいですね。




中学の頃には後を継ごうと決めていた


ーー仙台CATVのYouTubeチャンネル「みんなのテレビ・仙ぶら」を拝見しました

(貴幸)震災当時学生だった若者たちの、地元での活動を主に取り上げている番組なんです。



ーーそのなかで、中学を卒業する頃には農家を継ごうと決めていたと

(幸江)トラックに生活道具を積んで高校の寮に向かうとき、車の中で急に「農家は俺がやるから心配するな」って。中3の時だよね。

(貴幸)僕はよく覚えていないんですよね(笑) ただ、二人の兄はそこまで農家をやりたいようには見えなかったので、その頃から自分がやろうと思っていました。
大学卒業後6年ほど社会勉強のため民間企業に勤め、戻って農業を手伝うようになって、今年で5年目ですね。



3代目の新たな取り組み

ーー戻ってから新たに取り組んできたことはありますか?

(貴幸)今まで数値的な管理は母が手書きでやっていましたが、自分がExcelで管理しています。あとはiPadを導入してパッケージを自分たちで作ってみるとか。
一番は、売上の管理ですね。単価の管理を自分がやっているので、数値化しデータを蓄積していって、数字の裏付けのある農業をしていきたいなと考えています。

あとは、宮城県内で消費していただくのが一番いいのですが、ECサイトへの出品なども検討したいですね。そのほか、InstagramなどSNSの活用も考えています。



ーー3代目として、今後どうしていきたいですか?

(貴幸)原木椎茸を後世に残していきたいので、続けられる環境を今のうちに作っておきたいですね。あと、地域の人たちからも喜ばれるもの作りを続けていきたいなと思っています。


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