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涌谷園芸ファーム 手嶋真也さん

写真:涌谷園芸ファーム手嶋真也さん

宮城県北部に位置する涌谷町。JRの駅からほど近い、田んぼの中に残った森のように見える花勝山で「黄金レモン」を栽培しているのが、涌谷園芸ファームの手嶋真也さんです。

1株ずつ鉢植えで大切に育てられている手嶋さんのレモンは、香り高く、誰もが「こんなレモンは食べたことがない」と驚く味わい。無農薬栽培、糖度は11%と高く、ワタにも苦味がないので皮ごとすりおろして料理に使え、種以外捨てるところがありません。

レモンは料理やお酒の添え物、引き立て役だというこれまでの概念をくつがえす手嶋さんの黄金レモンは、仙台の有名レストランやホテルで提供されており、当社ではレモンパイやサブレなどでお客様に大人気です。



1本だけ残ったレモンの木を見て「やってみなければわからない」


写真:レモンの苗を見る手嶋真也さん

ーーレモン作りを始めたきっかけは?

レモンは今年で5年目です。もともと両親が始めた花卉農家で、シクラメンやラベンダーなどを育てています。花のすき間時間になにかできないかと考えていたとき、最初に私に「レモンを作ってほしい」と依頼してくれたのは、仙台にあるレストランのシェフの方でした。メゾンカイザー仙台さんを紹介してくれたのもその方ですね。

50年ほど前に日本に柑橘ブームがあり、うちでも父がレモンの苗木を販売していたのですが、ある年の大寒波で、1本を残して全部枯れてしまったんです。でもその残った1本が、40年間ずっと実をつけているんですよ。
なので、もしかしたらここではレモンができるのではないかと。やってみなければわかりませんので、それで最初60本くらいからスタートしました。



ーー手嶋さんのレモンは「黄金レモン」という名前なんですね

品種はマイヤーレモンです。作ったレモンは、ちょっと拭いただけでツヤツヤに光って。涌谷町は日本で初めて金が採れたところですので、それにちなんで「黄金レモン」という名前にしました。

うちのレモンは、市販のレモンと比べて3倍くらい果汁が多いんですよ。また面白いことに、普通はレモンの皮と身の間にあるワタの部分って苦いんですけど、うちのは一切苦くないんです。なので皮ごとすりおろして食べられます。


写真:黄金レモンの新芽を握る様子

この新芽をくしゃっとして香りを嗅いでみてください。葉っぱからふわっとレモンのいい香りがするでしょう? 葉をそのままローリエの代わりにカレーに使う方や、葉や枝を香り付けにそのままオイル漬けにする方もいて、そのような新しい使い方を見出してくれてありがたいですね。実だけでなく、枝も葉っぱも捨てるところがないんです。



鉢植えで、それぞれの木の個性に合わせて管理

ーー本当に葉っぱだけでもとてもいい香りがしますね。ワタが苦くないのは育て方が違うからですか?


写真:収穫された黄金レモン

そうですね、肥料のあげ方で味わいがまったく変わるので。
うちでは1本ずつ鉢で育てています。100坪しかないハウスの中に限られた本数しかありませんので、鉢植えにするのはデメリットなんですが、一方メリットでもあって。
鉢植えにしたレモンは、実の数が少なくなるんです。でも数はならないけれど、美味しいレモンがなりやすい。下から余計なものを吸わずに鉢の中だけで完結しますから、自分が想像した通りの栄養をあげられるので、味がしっかり決まるんです。
水も、山から湧き出る湧き水を使っています。水道水とは全然違いますよ、特にここは硬水でカルシウムなどの成分が入っていますので、それがダイレクトに効きます。

葉っぱを見れば一本一本の木の状態がわかります。こちらの少し黄色っぽい葉っぱの木は鉄不足なので、それに合わせた肥料をやる、そのように1本ずつの管理もしやすいんです。
同じレモンでもそれぞれの木で性格が違いますので。こいつは大きくなるなというのもあれば、なかなか育たないなというのもありますし、個性があってまるで子育てのようで面白いですよ。



お客様がほしいものを作り続ける


写真:1本ずつ鉢植えにしたレモンが栽培されているハウス

ーーこれからレモンはもっと増やしていくのですか?

たぶんもう増やさないですね。ほかのものにも力を入れていきたいので。
「自分が作りたいから作る」というのは、僕は一切やったことがないんです。全部、お客様がほしいというものを作っています。いろんな方から「これを作れないか」と言っていただけるので、僕もできる限り応えたいなと。その方たちと輪を広げていって、そこからまたいろんなものにチャレンジしていけるような、そういうつながりを大事にしていきたいなと思っています。
できないと言ってしまえば、そこで終わってしまいますので。



ーー今後どんなチャレンジを始める予定なのですか?

レモンと、バニラのほか、今年からフィンガーライムとカレーリーフを始めました。カレーリーフは仙台のカレー屋さんとコラボする予定で栽培しています。
あとはベルガモットですね。ダージリンティーを作るときの香り付けに使われるハーブですが、これは来年になるかな。

新しいものにチャレンジするのは、自分が飽きないためでもあるんです。人間どうしても一つのことを続けていると飽きますから。
新しいことを取り入れながらやっていくと、あれもやりたいな、これもできるなと広がっていきます。



商売の基本は「人を裏切らないこと」

人は裏切りたくないというのが自分の信念なんです。裏切られるのは仕方ないですが、自分から裏切るようなことだけはしたくない。それが商売だと思っているので。
それだけは曲げずにこれからもいきたいですね。


写真:涌谷園芸ファーム手嶋真也さんとご家族

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