Cuisine locale地産地消

ファンファームなとり 佐々木 綾子さん・和也さん

写真:ファンファームなとり佐々木綾子さん

仙台空港に向かう飛行機がすぐ近くに見える、宮城県名取市の「ファンファームなとり」。宮城県では数少なくなった、土の畑でイチゴを育てている生産農家さんです。

ご夫婦でイチゴ農家として独立して5年。「子どもたちに安心して食べさせたいと思える、美味しくて安全なイチゴ作りにこだわりたい」という佐々木 綾子さんに、イチゴへの想いや土耕栽培にこだわる理由を伺いました。



土耕栽培にこだわる理由


写真:イチゴの苗を手入れしている様子:ファンファームなとり佐々木綾子さん

ーー土耕栽培を行っているのは大変めずらしいそうですね

宮城県内では希少ですね。宮城の場合は、亘理町や山元町などのイチゴ産地が、震災による津波の影響で土で作るのが難しくなってしまったんですね。今は養液栽培、プランターのような棚で作る高設栽培が主流になりました。

ですが、やはりイチゴは土耕栽培のほうが根っこを張る量も多く、味に奥行きや深みが出て、土の力を活かした濃い味わいになると感じています。
土耕栽培は腰を曲げての作業になるのでとても大変なのですが、最初から土耕で作ることしか考えていませんでした。



「幸ノ香」が一番美味しかった


写真:さちのか(幸の香)の苗

ーーなぜ「幸ノ香(さちのか)」を選んだのですか?

独立前に主人が勤めていた農業法人は米・麦・大豆など大規模農業がメインなのですが、冬場の空いた期間の仕事作りとして、土耕栽培の「幸ノ香」を作っていました。
この「幸ノ香」が、これまで食べたイチゴの中で一番美味しかったんです。

そこで、幸ノ香の美味しさをもっと広められないかな、一時的に作るだけではもったいないので、自分たちでもう少しできないかなと思い、2018年に独立して幸ノ香の栽培を始めました。

イチゴは品種による味の差が一番大きいとは思うのですが、人によって、作り方によって大きく味が変わります。とても繊細で難易度の高い作物なので、毎日味を確かめながら出荷しています。
「こんな美味しいイチゴは初めて食べたよ」と言っていただくことも多く、リピーターさんもどんどん増えて、本当にありがたいですね。



小さな農家で、美味しさだけにこだわりたい


写真」:さちのか(幸の香)が栽培されているビニールハウス

ーー幸ノ香を栽培する農家さんも少ないそうですね

幸ノ香は、甘みと酸味のバランスが良く美味しいのですが、栽培にとても手間のかかる品種だからなんです。
最近出た品種は収穫量も多く、実が硬くしっかりしていて日持ちがし、病気にも強いというように市場性が高い。でも、幸ノ香は全部逆で、収穫量も少なくて、管理もしづらく、病気にも弱い。また脇芽がたくさん出るのでそれを手をかけて取り除いたり、花が付きすぎるので摘花が必要だったり……。
結局、美味しさと市場性は反比例なので、大きい面積でやろうとすると行き届かなくなってしまうんです。



ーー手のかかる分、美味しくなるんですね

そう思ってやっています。
農協職員として農業に携わっていたときに感じたのは、美味しさよりも市場性を重視せざるをえないということです。日本は特に規格が厳しいので。それはもちろん皆さんの食卓を守るために必要なことなのですが。

私は、小さな農家で、その代わり皆さんに完熟で収穫したイチゴをタイムラグなくお届けすること、あとは直接販売することによって大きさとか規格に関係なく美味しさだけにこだわること、そちらを選びたいなと思ったんです。

安全面では、やはり「安心」という部分でできるだけ有機JAS認証の取れた農薬を使おうと。あとは物理的に虫が好むような黄色の粘着シートで虫を捕る、それは薬ではないから皆さん安心だと思いますので、できるだけそういうものを使うよう心がけています。



ーー当社とのご縁は、2019年からでしたね

泉パークタウンのタピオで「タピ大」というイベントが開催されていて、イチゴのことを話しに行ったんです。そのとき来ていた県の農業関係の職員の方が、タピオにお店もあったことからメゾンカイザー仙台さんを紹介してくださったのがきっかけです。それからデニッシュにイチゴを使っていただけるようになりました。
うちのお客さまはもちろん、私自身も毎年楽しみにしています。

地元の食材にこだわっているメゾンカイザー仙台さんに使ってもらえるのは、生産者冥利に尽きますね。ですから私たちも絶対に品質は落とせないなと気を遣います。
それは私たちの自信にもなりますし、お客様に幸ノ香を普通に生で食べていただくだけでなく、パンとして食べるという新たな楽しみを提供できるので、とてもありがたいです。



ファンファームなとりのこれから


写真:ファンファームなとり佐々木綾子さん・和也さん

ーー5年やってこられて、これから目指すところは?

うちは幸ノ香が一番の看板なので、絶対に続けていこうと考えています。
あとは地域の方々の働く場所になれたらと思っていて。イチゴはしっかり手をかけたいので面積を広げられないかもしれませんが、他の作物で面積を増やすなどして、近くの人が働きに来られる場所にできたらいいですね。

もう子供の頃から単純にイチゴが好きなんです。イチゴってかわいいし(笑)
イチゴを食べると幸せな気分になれますよね、それをお客さまに届けられたらなと思っています。
幸せの香りのするイチゴなので、うちではブランド名を「幸ノ香」と表記しているんです。




写真:ファンファームなとりで販売されているイチゴ「さちのか(幸の香)」

ファンファームなとりでは、通信販売も行っています。
https://www.fanfarm.jp/


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